患者様・ご家族の体験談

家族思いの母が突然認知症に、
遠距離介護で支える私の思い

苦しい日々も楽しみながら、
認知症でも意志はある

介護の中でも笑顔の時間を

―認知症の家族がいる方や、これからそうなる可能性がある人達に伝えたいことはありますか

介護を笑いに変えてくれる仲間が大事だと思います。認知症は困ることや悲しいことも多いですが、家族が今まで見せなかった人間の素の部分を見せてくれることもあります。介護者同士で揉める場合もあると聞きますが、私は妹と母の様子をお互いに共有し、子供の頃には見られなかった母の姿を伝え合っています。苦しい時も妹と笑い話にできるので助けられています。

また、認知症になっても母は「私のしたいようにさせて」「自由にやらせて」と言います。自分の意志があって自由に暮らしたい気持ちは私達と同じで、尊重しなくてはならないと思います。症状が進行して何もかも手を掛けなければならないと思っても、後になって振り返るとまだあの頃は元気だったと感じますし、自分でできるうちは本人の意思を第一に考えてほしいです。

一方で本人にも介護者にもどうにもできないことがあります。認知症家族向けのサロンなどもありますが、本当に生活がひっ迫している人はそうしたサービスを受ける時間もないと思います。一人で抱え込まず、無理なく介護ができる環境づくりが社会としても重要と感じます。

「母に夜中に起こされ、寝かしつけた後も不安で一晩中スマートフォンにかじりつき毎日寝不足でした」。自身はインターネットで、お母さんの安全な暮らしを支えるための情報収集に心血を注いできたからこそ、その難しさを阿部さんは人一倍感じておられました。今後、同じ悩みを抱える認知症家族を助ける取り組みをしたいと話していました。
(聞き手:菅原康之 構成:吉田拓望)